配偶者の同意が得られるのであれば協議離婚はもちろん可能ですが、配偶者に離婚意思がない場合に裁判で強制的に離婚できるかというと、難しい問題になってくると思います。
婚姻中であるにもかかわらず不貞をした場合、いわゆる有責配偶者となります。“有責配偶者からの離婚請求が認められるか”という問題については昔から多くの判例が出ていますが、不貞をはたらいておきながら配偶者との婚姻を解消しようとする態度に対して、裁判所は基本的に厳しい見地から判断しています。
※「もしかかる請求が是認されるならば、妻は全く俗に言う踏んだり蹴ったりである」(最判昭和27年2月19日)
※「婚姻関係が破綻した場合においても、その破綻につきもっぱら又は主として原因を与えた当事者は、みずから離婚の請求をすることができないものである」(最判昭和54年12月13日)
とはいえ、いかなる場合においても離婚請求が認められていないわけではありません。
最判昭62年9月2日判決は、婚姻関係が既に破綻していることを前提にしつつ、
別居期間が36年にもなること
未成熟子がいないこと
相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況におかれるなど、離婚請求を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと
上記3要件を具備していることにより、有責配偶者からの離婚請求を認容しました。
この3要件は後の判例でも踏襲されていますが、実際の判断においては各要件を婚姻関係の具体的事情から総合的に調査し、全体として信義則(民法1条2項)に反しているかどうかが検討されているようで、別居期間が8年程度でも離婚請求が認められうる余地を認めた判例もあります(最判平成2年11月8日)から、ケースバイケースではあります。とはいえ、有責性のない場合に比べて、離婚が認められるためのハードルは相当に高くなっていると言えるでしょう。
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