相続・遺産分割 Q&A
Q: 相続財産管理人とは?
A:

相続財産管理人とは、家庭裁判所から選任され、相続人のあることが明らかでない相続財産の管理を行う者で、一般的には地域の弁護士が就任します。
(私も名古屋家庭裁判所から相続財産管理人に選任されたことがあります)

相続財産管理人は「相続人のあることが明らかでないとき(民法951条)」に選任されますが、これは相続人が単に生死不明・行方不明の状態を指すものではなく(東京高決昭50.1.30)、例えば戸籍の記載上は相続人が一人も居ないように見えるような状態などを指します。

相続財産管理人選任申立の際には、被相続人の出生〜死亡までの戸籍を全て家庭裁判所に提出しますから、戸籍の記載上相続人が生存していることが分かるようなケースであれば、その者が行方不明であったとしても失踪宣告や不在者の財産管理手続などが問題になるのであって、被相続人の相続財産管理人選任の問題にはならないわけです。そこで亡くなった方の利害関係人・債権者・特別縁故者などの立場で相続財産管理人選任の申立をお考えの方は、まず被相続人の戸籍調査を行う必要があるでしょう。

相続財産管理人は、特定の誰かの利益を実現する者ではなく、裁判所から選任されて公平迅速に債権者への支払や相続財産の管理清算等を行う者です。亡くなった方名義の財産が残っているケースであれば、利害関係人・債権者・特別縁故者などの立場で届出をすれば、相続財産管理人から支払を受けられる場合があります。

相続財産管理人の申立費用自体は、収入印紙代や郵便切手代、官報公告料など全て合わせても数千円程度です。ただ、そのあとで申立人が裁判所に納めなければならない金額がなかなか大きく、事案の複雑さによりますが数十万〜100万円程度になってしまうことがあります。これは相続財産の管理費用が足りなかった場合に備えて予め納めておくというお金ですから、結果的に相続財産から管理報酬や実費等が全て支出できた場合には申立人へ返還されます。ただ、相続財産が小額で管理費用を賄えないような場合には全く返還されないという可能性も十分ありますし、相続財産管理業務は1年以上続くものですから、すぐに返還されるものではないという点にも注意してください。

なお、相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人不存在の状態となります。限定承認をせず若干の財産を残したまま全ての相続人が相続放棄を完了したようなケースでは、引き続いて相続財産管理人選任申立をしたほうがよいこともあります。当事務所ではこういった案件も取り扱っておりますので、そうした点も含めてご相談いただければと思います。

■第951条(相続財産法人の成立)
 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

■第952条(相続財産の管理人の選任)
 1 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
 2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

■第953条 (不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
 第27条から第29条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

■第955条 (相続財産法人の不成立)
 相続人のあることが明らかになったときは、第951条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。




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