交通事故 Q&A
Q: 労災保険金を受け取ると損益相殺されますか?
A:

交通事故によって労災保険金を受け取ると、原則的にその受領額が交通事故の損害賠償額から差引かれることになります。これは“損益相殺”と呼ばれるものです。
損益相殺とは、被害者が交通事故によって別の面では利得を得ていたといえる場合に、その利得の限度で賠償されるべき金額が減少することをいいます。

業務中・通勤途中の交通事故による傷害・死亡などについて国が被害者に労災保険(労働者災害補償保険)を支払った場合、本来被害者に賠償金を支払うべき加害者に代わって、国が被害者に支払いをしたという関係になります。
そこで国は、支払った保険金額の限度で、もともと被害者が加害者に対して有していた支払請求権を法令上代位取得し、被害者は支払われた保険金額の限度で、加害者に対する支払請求権を失うと判断されています(最判平成8年2月23日)。

損益相殺として損害賠償額から差引かれる給付には様々な種類がありますが、一つの例として、このように支払った側が請求権を代位取得する旨が法令で定められているものについては、損益相殺の対象となると考えられています。被害者は労災保険から金銭の支払を既に受けており、一方の加害者は支払われた労災保険額を国から請求されることになるので、加害者は国と被害者の双方に対して支払い義務を負う理由はないからです。

なお、労災保険には年金のように継続的な給付を内容とするものもありますが、損益相殺の対象となるのは、現実に支給された額および現実には支給されていないものの支給が確定した額だけであり、将来支払われる予定の未払い部分までが損益相殺されることはないと考えられています(最大判平成5年3月24日)。
また、労災保険といっても、代位規定が法令上定められていない特別支給金については損益相殺の対象とならないと判断されています。(休業特別支給金および傷害特別支給金につき、最判平成8年2月23日)

損益相殺は公平の観点から認められるものですから、損益相殺される利益に該当するかどうかについては様々な観点から判断されており、見解も分かれることがあります。
判例も多く出ており議論のあるところですので、まずはご相談頂ければと思います。




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